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トリダイ プロフェッサー上野 琴巳

  • 農学部生命環境農学科

准教授

上野 琴巳

Kotomi Ueno

植物ホルモンの働きを分析。
生物の営みを支える物質の働きを探究する。

その物質を化学構造から見ていく。

動物がホルモンを分泌するように、植物もさまざまな生理作用をもつホルモンを作っている。上野琴巳 准教授の専門はケミカルバイオロジー(生物有機化学)だが、特に植物の生理現象をコントロールしている化学物質(ホルモン)を探したり有機合成をして、その働き方の詳細を明らかにしようとしている。

「簡単にいえば“植物のお薬づくり”のような研究になりますが、私は生物学というより、どちらかといえば化学に重点を置いて植物ホルモンを探究しています」。

植物ホルモンの化学構造を見ると「炭素と水素、酸素が結合して立体的に構成されているものが多い」という。ひとつのホルモンがその作用を発現するために化学構造の中で、特にどの部分が重要なのか、あるいは重要でないのか。分子の中の一部分を別のものに置き換えたとき、そのホルモンの作用はどう変化するのだろう。また、その変化は別の生物との関係性の上でどのように成り立っているのだろうか…。多くの疑問を抱きながら、さまざまな化学的アプローチを試みている。

生物の環境適応や共生のために。

物質には、それを構成する原子があるというので化学に興味を抱いたのは中学生のころ。高校生になると生物の授業が好きだった。「化学と生物は、どうつながっているのだろう」との素朴な思いで、大学進学は生物と化学の両方が学べる学科を選んだ。

学部4年次の研究室で出合ったのが植物ホルモンの一つ、アブシジン酸。植物が、水分の少ない乾燥環境におかれたときに、そのストレスで自らが枯れないように出す物質だ。その後、大学の研究員時にはストリゴラクトンというホルモンの働きに目を向ける。植物の過大な成長を抑制する作用もあるが、その物質は土中の共生菌を呼び寄せる作用もしているという。植物が生む未知なる物質は、まだ多いだろう。

地球温暖化による気候変動などによって、これから先、食糧難が世界的に広がるかもしれない。研究を通じて「食糧になる基幹作物とか他の植物を含めた病害対策や生長を守ることに寄与できることはないだろうか」と、ふと思う。

生物の営みに対する化学からの好奇心を常に胸に携えて研究している。

[取材:2022年10月]

1980年、岐阜県生まれ。

博士(農学)。岐阜県立関高等学校卒業。静岡大学農学部応用生物化学科卒業後、同大学大学院農学研究科修士課程修了。2008年、岐阜大学大学院連合農学研究科博士課程修了。東京大学大学院農学生命科学研究科研究員などを経て15年、鳥取大学農学部講師に着任。23年より現職。

植物ホルモンの研究のほか、キノコから抽出される物質の培養物から植物に作用する化合物を見つけ、その化学構造の解析もしている。

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