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トリダイ プロフェッサー樋口 雅司

  • 農学部共同獣医学科

准教授

樋口 雅司

Masashi Higuchi

生体維持に欠かせない
体内ホルモンの
分泌の過程を探る。

牛の下垂体ホルモンについて。

動物の体内では自身の生体機能を正常に維持するため、いろいろな器官からさまざまなホルモンが分泌され、主に血液などの体液中に流れて循環している。

樋口雅司准教授は、ホルモンを生成する器官の一つである「下垂体」に注目し、産業動物の中でも特に牛の下垂体ホルモンの産生メカニズムを研究している。

下垂体は、成長や生殖、泌乳、ストレス応答、代謝に関わるホルモンの分泌を担う重要な内分泌器官。「あまり馴染みがないかもしれませんが、たとえば乳牛だと妊娠、出産後に泌乳があって、やっとおいしい牛乳が搾られます。また生まれた子牛は成長ホルモンの作用ですくすく育ちますので、下垂体ホルモンはこれら世代をまたぐ成育サイクルの要所に深く関わっていることになります」。

体内で状況に応じて生命活動に関わる機能を調節する役割を担うホルモン。だが、その分泌の詳しい仕組みについては未解明なことが多い。下垂体においても同様だ。

それぞれの役割を果たすホルモンの源泉へ。

下垂体の機能維持を考え、各種の下垂体ホルモンの合成過程を調べるなかで准教授は、それぞれのホルモン産生につながる根本にある未分化な幹細胞に着目する。

「ホルモン分泌を最終的に担うホルモン産生細胞は分裂して増えることは、それほどありません。ですから、ホルモン産生細胞ができる前段の、増殖能力のある未分化な幹細胞からどのように各種ホルモンの産生細胞ができるのかを探っています」。

そのため、まずは下垂体での幹細胞を分離し集めて調べる必要から、2020年、その幹細胞を分離することに成功し、次の研究ステップに向かっている。

中学生のときに父親に連れられて競馬場へ行ったことがあった。「あんな大きな動物が、すごい迫力で走っているのを見て、馬に乗ってみたいと思った」という。それがきっかけで、高校進学は馬術部のある高校を選んだ。動物に興味をもち大学進学で獣医畜産学部へ。ここで動物の栄養学や生化学にふれ獣医学を専攻した。

「動物のからだの仕組みや病気の原因には、まだたくさんの“不思議”があります。将来の獣医療や畜産に貢献できる人になってほしい」と学生に期待している。

[取材:2021年10月]

1982年、東京都生まれ。

博士(獣医学)。東京農業大学第一高等学校、北里大学獣医畜産学部動物資源科学科卒後、2011年、同大学獣医畜産学研究科獣医学専攻博士課程修了。大学院生のときに動物の生化学を探求する。その後、明治大学研究・知財戦略機構研究推進員に在職中に「下垂体」の機能とそこで分泌されるホルモンの作用などを研究。15年より鳥取大学農学部講師を経て現職。

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