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トリダイ プロフェッサー金 京純

  • 農学部共同獣医学科

准教授

金 京純

Kyeongsoon Kim

大学敷地内にある古墳も蚊の捕獲場所のひとつ。捕まえてきた蚊のおなかから中腸を取り出して顕微鏡とDNA検査で病原体を分析している。

感染源の蚊を突き止めることは
生態系のバランスを
守ることにつながります

蚊のおなかを解剖して病原体を分析する

「蚊をつかまえてきて解剖するんです」と聞いただけで、一気に興味が湧いてきませんか? 金准教授は「病気をうつす蚊の研究」をしている。マラリアに罹った動物を蚊が吸血すると、蚊のおなかの中でマラリア原虫が増えて寄生する。針を使って取り出した中腸と唾液腺の状態を顕微鏡で見たり、DNA検査をしたりして、どの蚊が媒介蚊として機能しているのか調べる、というのが研究内容だ。

蚊が媒介する感染症の流行は、人でも動物でも、世界中いたるところで起こっている。流行を鎮圧したり、防いだりするためには、病原体の運び屋となる蚊の生態情報が必要となってくる。金准教授が専門としている「トリマラリア」は、本来、鳥→蚊→鳥の感染サイクルで、人に感染することはないが、野鳥と蚊の間でどんな病原体のやり取りが行われているかを予測することができれば、動物と人の両方が感染するほかの病原体にも応用できるのだという。

病気をうつす蚊の研究は動物にも人にも役立つ

「日本は感染症に関する危機意識が薄れてきています」と金准教授。そのため蚊を専門とする研究者が極端に少ないことに危機感をもっている。数年前、東京でデング熱が流行したときは、現役を退いた先生方も借り出されて、数少ない専門家たちが総動員で流行の制圧にあたっていた、という現状も。

獣医師といっても、ペットや家畜の診療にあたる獣医師から、研究機関や企業で研究する人、食の安全や感染症の予防など公衆衛生に携わる人など、活躍の場は広がっている。

「私たちが専門としている蚊の研究は、病原体がどのように人や動物にうつって生き延びているのかという研究であり、動物の健康、人の健康の両方に関わること。その先には動物も人も健康的に生きていける、地球環境のバランスを守ることにつながっていけば」という金准教授の思いがある。

[取材:2018年10月]

受験生へのメッセージ

自分の興味があることを伸ばしていくことも大事ですが、逆に全然興味のないことに実際に関わってみると、それまで知らなかった楽しみが見つかることがあります。私自身の蚊の研究もそう。最初は気が進まなかったけれど、やってみたら面白かった。だから、若いうちは何事もシャットダウンするクセはつけないで、とりあえず色々なことを覗いてみてほしいと思います。

1979年千葉県生まれ。

私立志学館高等学校卒業。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。岐阜大学大学院連合獣医学研究科博士課程修了。国立感染症研究所流動研究員、日本大学動物医科学研究センター博士研究員を経て、2013年より鳥取大学農学部共同獣医学科助教、2017年より現職へ。

趣味はバードウォッチング。

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