トリダイ プロフェッサー野波 和好
- 農学部生命環境農学科
- 植物菌類生産科学コース
教授
野波 和好
Kazuyoshi Nonami
現場から学ぶ農業工学。
農業機械の開発・研究は、
いつも実体験からの発想で。
ローカルな現場へ行こう。
就労者の減少や高齢化など、さまざまな課題をかかえる農業は、作業の機械化やICT(情報通信技術)の活用で労力の低減や効率アップが図られている。しかし、その多くの対象は米や麦などの基幹作物で、地域特産の農産品(ローカル作物)に目が向けられることは少ない。「機械化が及んでいない手作業、重労働の農作業は今もたくさんあります」と野波和好 教授は言う。
農業工学が専門である。といってもバイオ系ではなく工学的観点から農業にアプローチする。自然の作用に向き合い、人の経験と勘を頼りにしてきた農業の営みを見てきた経験から、一つ一つの細かい農作業を機械化していくことは、それほど単純ではないことが身に染みている。
「農家さんが、どんなことで困っているのか、どんな機械があれば作業負担が軽減されるのかを、直に現場で聞いているうちに新しい発想が出てきます。それこそ“ローカル”。だから、農業の現場に立ち会って研究を進めていくのは、とても大切なことなのです」。
大規模農業だけじゃない“農”の営み。
教授は大学院修士を修了後、大手の農機メーカーに就職した。最初の配属先は、開発中の試作機の信頼性を評価する「実験部」。コンバインなど実際の作業を想定した過酷な条件でも狙った性能が出ているか、データと向き合う、厳しい目を養った。その後、設計・研究部門に移るが扱うのは主に基幹作物を対象とした仕事。でも「どこか違う視点で農機の開発・研究をやりたい」との思いがあり、母校の鳥取大学へ。
そこで最初に取り組んだのが、今では新国立競技場などで使われている鳥取産の芝の収穫作業機械に関する研究だった。作業の手間を調べて、これまで人力に頼っていた工程の機械化を進め、「拾い上げ→選別・積み重ね(束にする)→結束→搬出」の一連の収穫作業を1台の機械でできないかと考案した。また鳥取県特産の砂丘ラッキョウの調製機(根と葉を切る作業機)も開発。いずれの機械も実用化されている。
「父は梨やブロッコリーをつくる専業農家で、小さい頃からその農作業を身近に見てきました。米などを作る大規模農家とは違う目線で、各地にある地場産品を作っているがんばる中小規模農家を工学的アプローチで応援していきたい」と、秘めた想いは熱い。
[取材:2020年10月]
1962年、鳥取県生まれ。
鳥取県立倉吉東高等学校卒。鳥取大学大学院連合農学研究科(生物環境科学専攻)博士課程修了。博士(農学)。1987年〜2013年、三菱農機株式会社にて開発・研究部門に所属。13年より鳥取大学農学部附属フィールドサイエンスセンター准教授。
高校生のときは吹奏楽部でトランペットを吹く。父親は専業農家で、鳥取での栽培に適したブロッコリーの品種選定と栽培導入を試み、地域特産品の開拓を実践した。