鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー浅井 秀子

  • 工学部社会システム土木系学科

准教授

浅井 秀子

Hideko Asai

地域から見た住まい。
住まいから見る地域づくりの建築学。

実務経験から湧き上がった“住まい方”への研究心。

大学卒業後に1級建築士の資格を取得。民間企業で約10年間、おもに住宅建築の設計にたずさわった。建築の実務経験を積んでいくうちに、ふと「もっと勉強したい」という思いが湧き上がる。

住宅は施主にすると生涯の生活に直結する大きな買い物だ。「施主のさまざまな思いを汲んで設計するのですが、図面だけでは施主と設計者とのあいだにイメージの違いが生じることがあります。空間感覚(認知)が平面の設計図だけでは相互に伝わらないこともあるのです。もっと広い視野で“住まい方”を基にした地域づくりの提案ができないか」と考えた。その後、研究心に駆り立てられ、研究・教育の場である大学に身を置くことに。

たとえば1戸の住宅を見ていても、その住宅の周辺環境や気候・風土・歴史・地勢など地域性との関連に興味を抱く。浅井秀子 准教授の研究は、住宅を人々の生活の基盤として位置づけながら、そこから地域性を見る方向と、逆に地域性から個々の住宅を再検討するという相互の意味合いが含まれている。

研究分野は建築計画。といっても、この分野のすそ野は広い。20年以上楽しんでいる趣味の茶道を例にして話すことは、「建築士って失礼よね、と言われることがあります。茶道もわきまえないで茶室の造(つく)りばかりを知りたがるって。実は、私もかつて、そうだったんですよ(笑)」。

災害被災地での生活再建を考える。

2000年10月。鳥取県西部地震が発生。

「このとき私のライフワークが、また一つ変わったような気がします」という。被災地へ行って、被災者の生活や地域活動の支援のあり方を考えるようになる。とくに住宅再建において鳥取県西部地震では公的資金が投入される初めての施策がなされた画期的な出来事があった。その後も、震災は全国各地で起こり、新潟県中越地震、能登半島地震、そして東日本大震災など各地の被災地の状況を現地に赴いて調べている。とりわけ注目しているのは過疎地域での生活再建。

2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックにあたり、メーン会場となる新国立競技場の建設問題では「意匠(デザイン)と建築構造計算・施工手順がマッチングしていたのかどうか」と疑問をもつ。一つの建物(建築物)には、実に複雑な要素をもつことがこの一例で理解できる。

研究で取り扱うテーマは「災害時の生活再建」「防災教育」「まちなみ調査」「古建築の実測調査」など多岐にわたる。

「まずは、建築って面白い、楽しい!ということを感じてほしい。そこから自分のやりたい分野を探してもらいたいと思います。授業のみならず学外に出て行って体験する中で、自分のもっている力を発見し将来に生かしてほしい」。

[取材:2015年11月]

1961年、鳥取県生まれ。

博士(工学)、1級建築士。島根大学総合理工学研究科博士後期課程後期創成マテリアル工学専攻修了。建築設計事務所勤務を経て2000年、鳥取短期大学に勤務。11年より鳥取大学へ。

鳥取県西部地震を期に、自然災害の被災地での生活再建を「住まい」(住環境と生活)の観点から研究。個々の住宅のみならず、成りたちと地域領域の広いコミュニティーを考慮した建築および地域づくりを提言している。

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