トリダイ プロフェッサー原 豊
- 工学部機械物理系学科
教授
原 豊
Yutaka Hara
風車は、
そこに吹く風の力を
いつも感じている。
名付けて「バタフライ風車」を考案。
東日本大震災での原子力発電所の事故や化石燃料による地球温暖化で、ますます関心が高まっているのが太陽光、水力、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーだ。そのうち風車を利用した風力発電装置の研究に取り組んでいるのが原豊 教授。
「もともとは風車が専門ではなかった」という。空気の流れを研究する流体工学がメーンで、大学院生のころは真空の空間に微量の気体を入れたときに起こる現象をレーザーで測定したりしていた。「ただ、空気(風)の流れを利用する風車も流体を対象として扱うことでは同じですね」。
風車というと、一般には大きなプロペラが回っているイメージ。ところが教授が設計する風車は独特な八の字型の小さい翼を備えた形状をとっている。名付けて「バタフライ風車」。たしかに蝶の羽のように見えてくる。このような形状は流体力学が示す「揚力と抗力」に関係している。
再生可能エネルギーはその普及のために固定価格買取制度(FIT)が後押しするものの、風力発電は設備にかかるコストの割に発電量の不安定さや費用対効果などの課題が指摘される。そこで教授はコスト削減と高効率化、安全性を高めるために小形の風車づくりを模索してきた。
再生可能エネルギーを、もっと身近なものに。
その結果、「プロペラのような水平軸回転からバタフライ翼での垂直軸回転にし、さらに風の強さによって回転翼が自然によじれる構造をつくった」という。つまり、風が強ぎると回転翼に大きな負荷(抗力)がかかり過ぎて装置が損傷される危険を防ぐことと、微風の場合での効果的な揚・抗力のバランスを考えている。
「太陽光発電もそうですが、意外に身近なところに再生可能エネルギーにつながる要素はたくさんあると思っています。浮体式の大きな洋上風力発電が注目されていますが、それ以外にも身近にできる風力発電があるのではないか」と思う教授。「科学者の目をもった技術者になりなさい」と先輩教授に言われたことが今でも印象に刻まれていて、「サイエンティストとしての目は、どこにでも必要とされていることを学生に伝えたい」と話す。
民間企業などとの共同研究で、2016年から最新の試験機による風力発電の実証研究を新たに始めた。試行の成果を未来につなげたい思いで“風”と向き合っている。
[取材:2016年10月]
1964年、静岡県生まれ。博士(工学)。
静岡県立清水東高等学校卒。89年、名古屋大学大学院工学研究科電子機械工学専攻(修士)修了、博士課程を経て同大工学部(電子機械工学科)助手・講師。97年、鳥取大学工学部(応用数理工学科)助教授に。
流体工学の視点から風車を研究しはじめて15年以上になる。垂直軸型の小形風力発電装置の実用化を模索。
学生には「ものまねに止まらず、自分で考案し工夫していく思考を大切にしてほしい」と思っている。