鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー松浦 治代

  • 医学部保健学科
  • 看護学専攻

教授

松浦 治代

Haruyo Matsuura

注目の公衆衛生学で
地球レベルの看護を目指す。

東日本大震災でクローズアップ

公衆衛生看護学は、地域全体の健康を考える学問。病院が個人の健康を看るのに対して、社会の水準で健康を看る。たとえば鳥インフルエンザ、生活習慣病なども公衆衛生看護学の領域だ。環境問題がますます重要視される社会に必要不可欠な学問とされている。松浦治代 教授は公衆衛生看護学の分野のなかでも難病患者の支援について、2004年から調査研究に取り組んでいる。そして2009年くらいから災害支援を進めていたが、その研究発表が2011年に発生した東日本大震災によってクローズアップされるようになった

難病の中でもテーマとするのはパーキンソン病。多くの患者さんと実際に面談しながら、災害対策に対する患者サイドからの思いを調査する。これまで聞くことのなかった生の声をまとめた貴重な報告書は、福祉衛生学会などで高く評価された。「病気のことを知られたくない患者さん、避難所に行きたくない患者さんもいて、地域の人はどう対処していいのか分からない状況が多々あります。患者さんと地域の人に、自分から考えて、もの言えるようになってもらうのが公衆衛生なんです」。

ゼミの学生と一緒に、地域看護(公衆衛生看護)の活動にも取り組む。現在は日野郡江府町で、「地域ぐるみの健康づくり」をテーマに3年計画で実態調査が進行している。「2013年は学生が江府町に行って、血圧に対する関心を高めてもらう活動を行いました。調査は、まず地域の方々と話すことから始まります。看護の技術的なテクニックよりも人を惹きつける話し方、一緒に行動できる仲間づくりが大切となってきます」。鳥取県は行政・自治体(住民)・鳥取大学の官民学の関係が大変良好で、調査や研究に協力的だ。学生にとっては豊かな実習を体験でき、専門知識を学ぶのにも適した環境が待っている。

患者さんとの出逢いは一期一会です。

看護師になろうと決めたのは高校時代。短大か専門学校しか知らないでいた。当時通っていた塾の先生が資質を見抜き、「看護大学に行きなさい」と助言されたという。その言葉に従って東京の大学へ。入学後は看護が人間と向き合う学問であることを知り、もっと深く知識として学びたいと思った。その後、教壇に立ち更に学びたいと大学院に進み社会医学を専攻した。「公衆衛生看護学は、ぼんやりとしたイメージですよね。具体的に何をするか分かりにくいですが、いわば一番広い領域ともいえます。病院の中の一時的な看護ではなく、人の一生に関わる地球レベルの看護と思ってください」と教壇から学生に語りかける。

公開講座やセミナーの講師としても忙しいが、趣味の茶道の稽古を休むことはない。「茶道の一期一会の精神は、患者さんと出逢って時間を共有することと同じように思います。それに茶道の所作は頭で理解するだけではできなくて、体で覚えないといけません。それって血圧の測定などと同じなんですよ」。

病気を自己コントロールできる患者さんをスゴいと尊敬し、そんな患者さんが一人でも増える手助けができるよう、これからも草の根の活動を続けていきたいと思っている。もうすぐ茶道師範の免許皆伝。趣味も仕事もブレがなく一筋だ。

[取材:2014年2月]

鳥取県生まれ。

鳥取県立米子西高等学校卒。87年、聖路加看護大学看護学部卒業。01年、島根大学大学院人文社会学系研究科法学専攻修士課程修了。09年、鳥取大学大学院医学系研究科社会医学系専攻博士課程修了。

学部では公衆衛生看護学Ⅰ、Ⅱ・公衆衛生看護学演習・公衆衛生看護学実習、住民活動と健康、大学院では地域保健学特論・地域保健学演習等を担当。日本看護科学学会、日本地域看護学学会などに所属。書籍『看護実践シリーズ1・2』(共訳)。

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