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トリダイ プロフェッサー本間 正人

  • 医学部医学科

教授

本間 正人

Masato Homma

災害派遣医療チームDMATを
日本に導入した立役者。

医師が災害現場に出て行けば、もっと救える命がある。

「DMAT」という言葉を知っているだろうか。大地震や航空機、列車事故などの災害現場で迅速に救命治療を行う専門的なトレーニングを受けた災害派遣医療チームのことだ。2014年はTVドラマの題材にもなり、現場で傷病者を救う若き隊員の姿が描かれて話題となった。日本でのDMAT発足のきっかけは、1995年に起きた阪神・淡路大震災だった。戦後最大級の地震として死者6000名以上を数えたが、初期の救急医療体制が整っていたなら防げたはずの災害死は500名に達するという研究報告がなされたのだ。そのような背景から、2001年度より厚生労働省は研究班を立ち上げ、日本版DMATのあり方について検討を始めた。メリーランド大学で災害計画を研究して帰国したばかりだった本間正人 教授は、そのチームの一員として報告書をまとめ上げた。こうして2004年、全国に先駆けて東京都が初めて自治体のDMATを発足。翌年、厚生労働省は日本版DMATをスタートさせた。

いわば、日本でのDMAT生みの親ともいえる教授は、国内で発生する災害にいち早く出動するのみならず、世界で発生する災害やテロ対策に対しても、援助隊や現地災害対策本部のメンバーとして参加してきた。被災者200万人を超える未曾有の被害が出たスマトラ島沖地震でも国際緊急援助隊として活躍。これまでの多数にわたる現場体験を通じて、今後は「記録と伝承」が必要と考えている。「災害派遣医療の課題は“無関心”なんです。災害は30年や50年といった頻度で起こるもの。しかし、1年経つと忘れてしまうことも多い。過去の対応を後世に伝えることが重要です」。人から人へと語り継ぐため、災害医療研修会の講師として自らの体験を“口伝え”する。さらに、国内外で見聞した災害をデータ化する作業にも取り組み、日本の災害医療の基盤づくりに尽くしている。

日本に「ドクターヘリ」を導入するきっかけをつくる。

現在は医学部附属病院の救命救急センター長として、目が回るほど多忙な日々を送る。一刻を争うセンターの活動を支援するため、2014年、医学部附属病院の敷地内にヘリポートが完成した。医療機器と医薬品を搭載したヘリコプターに医師と看護師が乗り込み、救急患者のもとへ駆けつける「ドクターヘリ」が日本に正式に配備されたのは2001年のこと。その数年前、教授たちは先進的な東京消防庁のドクターヘリ運用のデータを収集した。これにより、厚生労働省が本格的な運用に踏み出す契機となった。

救急災害分野の教授として教壇にも立つ。災害現場でも実力を発揮できる高い能力を持つ人材育成に励み、学生たちには熱心にこう説く。「高い理想と夢に向かって努力しよう。日本での救急医療は、まだまだ新分野とされ研究テーマは多い。何よりも住民と直結した、無くてはならない分野。人を助けたいという初心を忘れることなく、技術の研鑽を続けてほしい」。

人命救助のために何日でも徹夜する。それを苦労ではなく誇りとする、日本を代表するスーパードクターが君の入学を待っている。

[取材:2015年2月]

1962年、埼玉県生まれ。

埼玉県立川越高等学校卒、鳥取大学医学部医学科卒業。国立病院東京災害医療センター救命救急センター勤務後、米国メリーランド大学ボルチモア校留学。

スマトラ島沖大地震・インド洋津波被害に対する国際緊急援助隊として派遣。

国立病院機構災害医療センター救命救急センター部長、日本DMAT事務局長を経て、09年から現職。

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