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トリダイ プロフェッサー柳 静我

  • 地域学部地域学科
  • 国際地域文化コース

教授

柳 静我

Jeungah Yu

チベットを取り巻く
壮大な歴史ロマンから、
多文化共生社会を考える。

列国の政策からチベットの歴史を探る。

誕生日に友人が、ダライ・ラマ14世の自伝をプレゼントしてくれた。本を読み彼の生い立ちとチベットの現状を知ると、歴史好きの好奇心に火がついた。それが柳静我 准教授とチベット史との出会いだ。

なかでも興味を抱いたのは17〜18世紀、中国最後の王朝・清とチベットとの関係。しかも、チベット側から見るのではなく、清朝がチベットに対して行った政策を通じてチベットの歴史をひも解いていった。「清は、少数の満州族が圧倒的多数の漢民族を抑えて建てた王朝。漢民族を支配し続けるために、モンゴル・チベット等の藩属国をうまくコントロールする必要があったのですが、その政策がすごく面白い」。強大な軍事力を持つモンゴルを懐柔したい清朝。そのモンゴルではチベット仏教が広く信仰されており、チベットとの関係は密接。つまり、モンゴルの懐に入るためのカギとなる国がチベットだったのだ。そこで清朝皇帝はダライ・ラマ5世と接見して関係を深め、自国の立場を強める政策を執ったという。まるで大河ドラマのような歴史ロマンではないか。

「多文化と共生する」ということ。

さらに興味深いのは、こうした政策の真意を漢民族に悟られたくなかった清朝が、2つの言語で記録文書を作成していたこと。漢語では漢民族に対する体裁を保ちつつ、本当の意図や水面下の動きなどは満州語で記されている。「2つの文書を見比べると、多様な民族を軍事力でもって一方的に抑えつけるのではなく、相手のことを容認しつつ巧妙な政策で調整し支配するという、清朝ならではのうまいやり方が見えてくるんです」。歴女の瞳がキラキラと輝いた。

すべからく政治には本音と建前が存在する。清朝の政策には若干狡猾さを感じてしまうのだが、「多文化を理解し受け入れる、その上でどう対応していけばいいかを模索するという考え方は、これからのグローバル社会を生きる私たちも見習うべきものがあるのでは」と准教授。東アジアの歴史を追いかけて各国を飛び回り、史学とともに中国語・満州語・チベット語・日本語を習得し、各国文化の知識も深めてきた彼女は、もう既にそれを当たり前にやってのけてしまっている。「学生たちは私を“韓国人”というより“東アジアをうろうろしている人”と思っているみたい」と笑った。

[取材:2016年10月]

1969年、韓国生まれ。

博士(文学)。韓国・中央大学附属女子高等学校卒。93年、韓国・漢陽大学人文学部史学科卒業後、同大大学院で清代チベット研究を始める。本格的な研究の場を求め、東京大学人文社会系研究科へ。08年、同大同研究科博士課程修了。日本学術振興会外国人特別研究員などを経て、12年鳥取大学へ。

研究で培った東アジア各国の歴史文化の知識と語学力を生かし、東アジア地域論・文化論等を受け持つ。

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