鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー塩沢 健一

  • 地域学部地域学科
  • 地域創造コース

教授

塩沢 健一

Ken-ichi Shiozawa

住民投票の実証研究から、
政策決定と「民意」のあいだに
見えるもの。

政策課題に対して準備しておくべき制度の一つ。

地域で起こる重要な政策課題について、その針路を直接、地域住民の意思に諮る住民投票が近年、各地で増えている。間接民主制をとる日本では、選挙で選ばれた議員(住民の代表)による議会で政策決定が行なわれるが、それだけでは収まらない課題がたくさんあるのが現状だ。ものごとを決めるときに「結果として政治や行政が判断を誤る可能性はあるだろうし、住民自身も判断を誤ることがあります。選挙で選ばれた議員に対して、有権者はすべて白紙委任したということはないので、(民意が集約しにくい問題が起こったとき)最終手段として住民投票を一つの制度として準備しておくことは必要だと思います」と塩沢健一 准教授は言う。

そもそも「住民投票」とは何なのだろう。投票結果が、ちゃんと民意を反映したものかどうか、さらにそれが政策決定にどれほどの影響力をもつのか……投票結果が出ても、にわかには測れない多面性をもつ住民投票にメスを入れる。日本で初めて条例制定による住民投票が行なわれたのは1996年のこと。新潟県巻町(現・新潟市)での原子力発電所建設の是非を問うものだった。以後「平成の大合併」といわれる市町村合併関連では全国各地で相次ぎ、住民投票への関心が高まってきた。

制度設計の発展を見すえて、実例から具体的に学んでいく。

しかし准教授は「まだ住民投票の制度は十分に成熟していないところがある」と見る。「投票率がとても低く、そもそも政策課題自体が住民投票にかけるにふさわしいかどうかと思われるものもあります」。

専門は政治学で主な研究テーマは住民投票の実証分析。大学院生のとき教わった指導教授の影響を受け、選挙研究の蓄積を住民投票の研究に応用。実際に行なわれる住民投票を題材に、その政策課題の成り立ちから条例制定の経過、選択肢の設定の仕方や有権者の判断材料となる情報公開のあり方などを関連づけて、投票結果の分析を行なっている。現地に足を運んで争点となる課題の調査をしたり、有権者の意識調査(郵送でのアンケート)をすることもある。

投票権が中学生や高校生にまで与えられるケースすらある住民投票は、公職選挙法の適用を受けないぶん、自由に制度設計ができる点では各自治体の創意工夫を生かせる半面、それが試されることになる。住民の“当事者意識”も問われる。「各地での経験、とりわけ住民が課題に対してどんな意識をもち、どんな情報をもとに、どう判断したかを調べていくことは、今後、住民投票が政策決定にどう機能し影響をもたらすかを考える上で重要になると考えています」。

学生へは「自分が心から好きだと思えるものを見つけたら、それを大事にする努力を惜しまずに」と言葉を送る。

[取材:2015年11月]

1978年、埼玉県出身。

博士(総合政策)。埼玉県立川越高等学校卒。中央大学総合政策学部政策科学科を卒業後、2008年、同大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。慶応義塾大学大学院法学研究科研究員などを経て14年、鳥取大学へ。

住民投票での有権者の投票行動に着目した実証研究では国内でも数少ない研究者の一人。政策決定の仕組みや「民意」を考えるヒントに富む、さまざまな視点での分析結果を考察・提示している。

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