トリダイ プロフェッサー大元 鈴子
- 地域学部地域学科
- 地域創造コース
准教授
大元 鈴子
Reiko Omoto
普段の「食」から
資源の持続可能な利用と
地域課題の解決を図る。
大きな課題と身近な食品の関係。
戦争や地球温暖化など、一人の小さな存在にはかかわりがないと思ってしまう課題も、普段、スーパーで手に取る食品を辿っていくと、意外なつながりを持っていることがある。アメリカでのトマトケチャップの不足は、新型コロナウイルスの影響で料理をテイクアウトする人が増え、小袋入りの需要が増大したことや、トマトの産地であるカリフォルニアにおける大規模な干ばつなど、疫病や気候変動がその要因となっている。国内の食品の値上がりも、もとをたどれば外国での戦争が要因となっていることがある。
「どんな食べ物にも環境や社会との何かしらのつながりがあります。そうしたつながりを調べることで、買い物をする時の見方が変わってきます」。大元鈴子 准教授は、身近な食べ物の環境、文化、歴史、経済などとの関係を探求するフードスタディーズの専門家だ。ローカルに使われる認証制度にも着目し、アメリカのサケのすめる川を守るSalmon‒Safeや、日本のコウノトリの生息地やサンゴ礁を保全する活動などの現地調査も行う。
食べ物から複雑な問題を紐解く。
「海のエコラベル」と呼ばれるMarine Stewardship Councilのスタッフとして世界的な水産物の流通を知り、また、研究者として世界のさまざまな食料生産の現場を歩いた経験から、「今のように気軽に食料が手に入る時代はいつか終わるかもしれない」と危機感を覚え、「自分で食べ物をつくるスキルを身に付けねば」と、鳥取県八頭郡智頭町内の一軒家に住み、野菜づくりに励む。すべて種から育て、季節の野菜を収穫し、瓶詰め加工して長期保存する。有精卵からヒヨコを孵化させ、鶏も飼い始めた。米作りも始めたので「あと、醤油があればすべて自作の卵かけごはんが食べられます」と笑う。
ローカル認証は、その地域の生産物と課題のつながりから生まれるもので、同じ仕組みをどこにでも適用できるわけではない。「身近な認証制度通じて『これはどういう意味だろう』『どういうストーリーがあるだろう』と一つ一つ確かめていくことで、生産物と地域の目には見えない新たな価値が見えてきます」。複雑に絡み合って簡単には解けそうもない問題も、食べ物を入口に考えると思いがけない解決の糸口が見つかるかもしれない。
[取材:2022年10月]
兵庫県生まれ。
博士(地理学)。関西学院大学総合政策学部卒業、同大学大学院総合政策研究科修士課程修了。カナダのWaterloo大学大学院で学び、Marine Stewardship Council日本事務所、総合地球環境学研究所での勤務などを経て、現職。
趣味はボルタリングで、自宅の蔵を改装し、「蔵イミング」と称して楽しむ。週末には、町内の山菜料理店の厨房を手伝うことも。田舎生活を満喫している。