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トリダイ プロフェッサー村田 暁彦

  • 医学部生命科学科

助教

村田 暁彦

Akihiko Murata

記憶する免疫システム。
その働きを追究するなかで、
医療発展の新しい糸口を見つけたい。

アレルギー炎症は、なぜ再発する?

「免疫細胞の多くは、体内で動き回っています。体に害を及ぼすウイルスや細菌などの病原体を見つけるとすぐに反応して、それを食べたり運んだり、そこで得た情報を他の細胞に発信したりと、それはとてもダイナミックな動きをしています」。

専門は免疫学。生き物が自身を護るためにもつ保護機能(免疫反応)にかかわる学問だが、どうやら免疫反応は複雑に発展してきて、さらに今もその進化を続けているのだろう。そんな尽きない思いから村田暁彦 助教は、惹かれるように免疫細胞の働きを追究している。

免疫細胞のなかで助教が注目している細胞の一つに「常在性記憶T細胞」と呼ばれるものがある。この細胞が、根治の難しいアレルギー性皮膚疾患などに深く関与していることをマウスでの実験で明らかにした。アレルギー性皮膚炎は、ステロイド剤などを使った対症療法でいったん治ったようにみえても再発してしまうケースが多い。というのも「炎症を起こした部分の皮下に記憶T細胞が長く留まり続け、同一の抗原に対して敏感な状態が局所的に持続するからです」。

医学の根幹にある免疫学として。

動かず局所に留まって絶えず外部からの抗原の見張り番をしている免疫細胞がいた。しかも、その細胞は“記憶”に基づいて抗原に過敏に反応してしまうために炎症を繰り返して起こす一因になっている…という。免疫細胞の働きは不思議に満ちている。「研究で1つ何かが分かると、別の謎が出てきます。だから興味は尽きないんです」。

自身もアレルギー性の花粉症に悩まされてきた。それが免疫学を学び、研究するきっかけでもあった。「大げさかもしれないけれど、免疫学は医学のなかの根幹に位置する学問の一つだと思っています」。多くの難病や感染症、外傷を含むほとんどの病気やケガに対して免疫反応は体内で絶えず起こり続けているからだ。

高校生のときは弓道に打ち込み、大学生になってストリートダンスを楽しんだ。弓矢は動かない的を目指すが、ダンスは自分から常に動く世界。動くものと動かないものとのあいだには微妙な関係の深さがあると感じた。その体験は、今の研究にも通じていると思っている。

自己免疫疾患など免疫反応による困難な病気は多い。今の研究を未来の医療につなげたいと思っている。

[取材:2022年10月]

1985年、静岡県生まれ。

博士(生命科学)。静岡県立浜松西高等学校卒業。鳥取大学医学部生命科学科卒業後、2012年、同大学院医学系研究科生命科学専攻博士後期課程修了。2011年から現職。

学生の時、細胞同士が接着するための新しい仕組みを発見した。顕微鏡を覗いて答えがわかったときの、あのゾクゾクした瞬間をもう一度経験したい、もっと知りたい。それが原動力となっている。活字依存症で、何か読んでいないと落ち着かない。

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