トリダイ プロフェッサー鈴木 慎一朗
- 地域学部地域学科
- 人間形成コース
教授
鈴木 慎一朗
Shinichiro Suzuki
新民謡の歴史を紐解き、
「日本の歌」を次世代の
子どもたちへ伝える。
鳥取を代表する民謡《貝殻節》。
「カワイヤノー カワイヤノー」のおはやしで知られる《貝殻節》。古くからの民謡で漁夫の作業唄として歌い継がれていたが、1933年、浜村温泉の宣伝のために《新民謡貝殻節》としてコロムビアからSPレコードが発売されると、全国的に知られるようになる。
鈴木慎一朗 教授は「一時の流行歌として研究の分野では関心を持たれてこなかった新民謡ですが、実は、伝統的な民謡の調査研究に大きな影響を及ぼしている可能性がある」と指摘する。「もともと民謡は人々に歌い継がれてきたもので、曲名や楽譜もないものがほとんどでしたが、新民謡という新しいスタイルが現れたことで、昔ながらの民謡をちゃんと整理して後世に伝えていこうという動向につながったようです」。師範学校で郷土教育の教材に取り上げられ、現在の教科書にも掲載されている新民謡。鳥取県の《貝殻節》をきっかけに、全国の新民謡の調査へ乗り出している。
音楽で子どもたちの感性を育てる。
教授が音楽の道を意識したのは、中学3年生の時。校内合唱コンクールの指揮者に選ばれ、優れた指揮でクラスを優勝に導いた。それまで音楽を専門的に学んだことはなかったが、「みんなで練習して一つの歌を築き上げていく過程が面白いなと思いました」。高校から声楽とピアノを始め、大学の教員養成課程を卒業後、小学校の教員となる。子どもたちを教えながら理想の教員像を求める中で教員養成の歴史に着目し、大学院で戦前の師範学校の研究に取り組む。
博士号を取得後は、子どもたちと直接関わるのではなく、これから子どもたちを教える保育者や教員を志す学生たちを指導する立場へ。「私自身、幼い頃からいい先生に巡り合えて『先生になりたい』という夢を持った。声楽やピアノはほぼ初心者という学生が多いですが、私も高校生になってから始めて、先生方に親身に指導していただいたお陰で上達することができました。実際に教育現場で働いていた経験も、教員を目指す学生たちの指導に役立っています」と語る。「鳥取に来たからこそ《貝殻節》と出合え、新民謡の全国的な調査という研究テーマを見つけることができた」。地域の財産である歌を調べ、学生たちと共に学び、そして未来へつなげている。
[取材:2021年10月]
愛知県生まれ。
愛知県立津島高等学校卒。静岡大学教育学部卒業後、愛知県内で小学校教諭を務めながら、愛知教育大学大学院教育学研究科芸術教育専攻を修了。兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科で博士(学校教育学)を取得。白梅学園短期大学保育科准教授を経て、2012年に鳥取大学へ。2021年から現職。
CD「こころのうた」をリリース。趣味は、歌との関わりに思いを馳せながら県内の温泉を巡ること。