鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー李 素妍

  • 地域学部地域学科
  • 国際地域文化コース

准教授

李 素妍

LEE Soyeon

文化財の保存。
それは、人の営みを知り
後世に渡していくこと。

文化財に秘められた多様性を科学する。

文化財は、その国や地域の歴史、文化、芸術、伝統技術などが合わさって出来上がったもの。だから「人間の営みを考える貴重な宝物なので大切に後世に引き継ぎ、多くの人に関心をもってもらいたいですね」と李素妍 准教授は話す。

専門は文化財の保存科学。たとえば専門家によって調査・発掘された埋蔵文化財の場合、出土したときは壊れているものも多い。では壊れた原因は何か、また保存や展示するためには、どのような修復や処理が必要なのか…。保存に向けては、さまざまな手法や方策がある。それを研究する学問だ。文化財の種類は多く、素材も金属や土、石、木材、ガラス、布、紙など多様だ。そのため保存科学では考古学や歴史学、美術史学のみならず、化学や物理、工学など自然科学の幅広い分野から協力を得ることも重要となってくる。理系分野との関連性が出てくるので、「文系の学生さんにとっては馴染みにくいイメージをもたれるかもしれません。でも、そう難しく捉えるのではなく顕微鏡で遺物の状態を調べていくことも、文化財の保護政策を行政や地域住民と一緒に考えることも保存科学につながっていきます」と准教授はいう。

地域文化の再認識を活力にしていこう。

大学では歴史学科で中国史を学んだが考古学の講義に興味をもち、長期休業を利用して発掘現場でアルバイトをしていたという。学部卒業後、大学院への進学を考えていたとき、日本の文部科学省が設ける留学制度を知り筑波大学大学院へ。院生のとき、研究テーマとして特に取り組んだのは鍋や釜、釘、馬具や鋤など鉄製遺物の腐食要因と、修復・保存方法の検討だった。

鳥取大学に赴任後は、文化財の装飾などに用いられてきた着色原料の顔料について研究する一方、文化財の防災対策についても提言。2016年に起こった鳥取県中部地震の際、文化財がどのような被害を受けているかを研究室の学生や他の専門家と現地調査した。そのとき感じたのは「地域に暮らす地元の人たちの協力がなければ文化財は守れないということでした」。文化財は博物館に収まっているばかりではない。「実は私たちの身近なところにも、たくさん存在しています。文化財を通じて地域の文化・伝統を再認識し、その大切さを実感しながら地域の活力にしてほしい」と思っている。

[取材:2021年10月]

1979年、韓国ソウル市生まれ。

博士(世界遺産学)。2001年、壇国大学(韓国)人文学部歴史学科卒。11年、筑波大学大学院人間総合科学研究科後期博士課程修了(世界文化遺産専攻)。12年から鳥取大学地域学部講師を経て現職。

主要な研究テーマは、文化財の保存と活用、文化財の防災など。学生には「興味のあることにチャレンジして多様な経験を積みながら視野を広げてほしい」と思っている。

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