鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー松野 隆

  • 工学部機械物理系学科

准教授

松野 隆

Takashi Matsuno

大空を自由に翔る夢。
気流を操る魔法の装置で
未来の乗り物を創造する。

燃費よく、より静かにより速く。

大空を悠々と進む飛行機にロマンを感じる人は多いだろう。人を何百人も乗せた物体がどうして浮くのか。ロケットはどうやって宇宙まで飛んでいくのか。その問いに答えてくれるのが、航空宇宙学だ。飛行機やロケットには、時代の最先端をいくさまざまな知識や技術が集結する。その一翼を担うのが、プラズマアクチュエータの先駆者である松野隆准教授だ。

プラズマアクチュエータとは、気流を発生させることで周りの流れを制御する装置のこと。2枚の薄い膜上の電極の間に高電圧をかけることで空気中の分子をプラズマ化して正負に電離し、そのうち正電荷のイオンが近くの分子に衝突しながら陰極側へ移動することで気流を発生させる。飛行機もロケットも、地上を走る自動車も、地球上で動くものはすべて空気の抵抗を受ける。プラズマアクチュエータは、薄い2枚の膜を取り付けるだけで空気の流れを制御できるため、結果として全体にかかる空気の抵抗を弱めることができ、少ない燃料でより静かにより速いスピードを実現することが可能となる。

実装に向けて最適化の手法を検討。

准教授が“流れ”に着目したのは、小学生の頃。お風呂の中で腕を平行に動かすと水面に渦巻が表れた。「どうしてこんな形になるんだろう」。夏休みの自由研究に取り上げ、図書館に行ったり、周りの大人に聞いたりしたが、真の原理は分からなかった。そして高校生になり、部活帰りに見上げた夜空に浮かぶ月を見て、「月は近い。あそこになら行ける」と実感。航空宇宙工学を志し、入った大学の授業で気体や液体などの流体について学ぶ中、やっとお風呂のお湯に渦が生じる理由が分かった。「高度な数学や物理の基盤の上でようやく説明できる事象について、子どもの頃から関心を持っていたというのはちょっとした自慢ですね」と笑う。

研究では、プラズマアクチュエータの開発から性能解析、実際に乗り物に搭載させるための最適化の手法などを手掛け、国内外の航空機会社や大手自動車メーカー、JAXAなどと共同研究に取り組む。乗り物の翼やエアロパーツなど、空気抵抗を考慮してデザインされている部分は多い。将来、プラズマアクチュエータの搭載により、飛行機やロケット、自動車は空気抵抗に捉われない今とは全く異なる形状になっているかもしれない。

[取材:2021年10月]

1975年、島根県松江市生まれ。

島根県立松江東高等学校卒。名古屋大学工学部機械・航空工学科航空宇宙工学コース卒後、同大学院工学研究科航空宇宙工学専攻で博士(工学)を取得。米国ノートルダム大学ハサート航空宇宙研究所研究員を経て、2006年に鳥取大学へ。

好きなエッセイストの言葉から、高校生へ「人生を賭ける仕事を選ぶのに急ぐ必要はない。必要なのは、自分は何が好きかを発見することだ」とメッセージを送る。

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