鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー臼井 真一

  • 医学部保健学科
  • 検査技術科学専攻

教授

臼井 真一

Shinichi Usui

悪玉か善玉か?
と、単純にはくくれない。
血中脂質の働きを追っていく。

気になる血中コレステロールを見ていくと…。

健康診断などで病院に行ったとき、必ずと言っていいほど血液検査を受ける。なぜかというと、体内の血管を通じて循環し続ける血液には身体の状態を知る手がかりが無数に存在しているからだ。その解析をするために「臨床検査技師」という医療職の人たちがいる。

臨床検査には多くの分野があるが、とりわけ臼井真一 教授が専門領域としているのが、血中コレステロールや中性脂肪などの脂質分析。「一般的に、血中の脂質は値が高いと血管を詰まらせる原因の一つとして考えられ、動脈硬化、ひいては心筋梗塞や脳血管障害など命を脅かす病気の危険因子と認識されています。しかし脂質は身体には必要な成分でもあり、その化学成分と体内での機能を詳細に調べていくと、まだ分からないことがたくさんあるのです」。

脂質は水に溶けないため、血中では「リポ蛋白質」と呼ばれる蛋白質との複合体として運ばれている。「リポ蛋白質には、脂質や蛋白質の組成が異なるいろいろな種類があって、体に良いとされるものや悪いとされるものもあり、それらを分けて簡単に測定することが可能になったのが私が大学院生のころでした」。

出てきたデータを読み解く力の養成。

代表的なリポ蛋白質であるHDLやLDLの測定法は確立されてきたが、教授が見ているのは、さらにその先だ。特に注目しているのがHDLの中でも「アポE」と呼ばれる蛋白質を持っている「アポE含有HDL」。

「HDLの中でもアポE含有HDLは、新しい検査項目になり得る脂質の一つです。メタボリックシンドロームの患者さんから得られるデータでは、その値が低いことが臨床研究で認められていますが、そのような分析からさらに研究を進め、臨床的に有用なリポ蛋白質の新しい測定法を探り、予防医学にも役立てたい」という。

次代を担う臨床検査技師の養成の一端を担う教授。ただ、学生には「検査技師としての国家資格を取得することは大切だけれども、それを最終目標にしないでほしい」とも。

最新の医療検査機器を使えば検査データは簡単に得られるかもしれない。しかし、そのデータをどう読み取るかは、人の判断に関わってくるだろう。「その判断の源となる基礎をしっかり学んでほしい」と教授は語る。

[取材:2021年10月]

1972年、北海道生まれ。

博士(保健学)。東京医科歯科大学医学部保健衛生学科卒。同大学大学院医学系研究科保健衛生学専攻博士(後期)課程修了後、岡山大学准教授(大学院保健学研究科検査技術科学分野)などを経て2020年、鳥取大学医学部教授。

主な研究テーマは血中の「リポ蛋白質の代謝や分析法」だが、それに基づいた疾患予防医学にも目を向けている。

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