鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー高橋 健司

  • 地域学部地域学科
  • 人間形成コース

教授

高橋 健司

Kenji Takahashi

手にするのは、「一式飾り」の「龍」。カエルの置物など陶器一式を使って、研究室の学生たちと出雲市で制作した。山陰はもとより、日本各地の「一式飾り」の調査は80回に上る。

地域に伝わる文化を見直し
伝統の価値や面白さを
子どもたちに伝えたい

山陰の「一式飾り」を通して地域学習のあり方を考える

「一式飾り」とは、陶器など暮らしの道具一式で話題の人や動物に見立てた作品を作り、地域の祭りで飾る生活文化。江戸時代に全国に広まった文化が、山陰を中心に今も伝わる。

高橋教授は東日本大震災直後、鳥取県南部町の「法勝寺一式飾り」と島根県出雲市の「平田一式飾り」に出会ったことがきっかけとなり、その文化的価値や面白さの本質を研究し始めた。フィールドワークだけでなく、地域の学校で子どもたちに伝統を伝える実践にも重点を置く。

「誰もが伝統は大事と口にしますが、何がどのように大事なのかを深く掘り下げて考えてみることが重要であり、伝統を継承するには、子どもたちが伝統の価値や面白さを実感できる学習が欠かせないと思います」と高橋教授。

「一式飾り」の価値の再発見を通して、伝統文化を次世代へつなぐ地域学習のあり方を探り、地域や学校と連携して実践に取り組もうと考える。

地域に学ぶことは未来への力になる

高橋教授は、学生たちと共に各地に出かけるフィールドワークを大事にしている。聞き取り調査や、地域の人たちの指導で「一式飾り」を制作した経験をもとに、学校での授業実践を行ってきた。研究室の学生は、各地の伝統文化を調べて卒論にまとめ、卒業後に教師になった者が少なくない。地域で学んだことは、逆に子どもたちに伝える立場になったときの大きな力になるのだ。

さらに、フィールドワークを行った多くの学生が、「一式飾り」を作る地域の人たちの発想の豊かさや、祭りを共に楽しむ暮らしの豊かさを実感している。ITやAl (人工知能)が進化し人間らしさが問われるなか、これからの生き方を考える上で、地域に学ぶ意義は大きい。

それぞれが感じた豊かさは、時を得て、自分らしい実を結ぶはずだ。「どんな暮らしを築いていくのか、卒業生たちの今後を見守りたい」と高橋教授は期待を寄せている。

[取材:2018年10月]

受験生へのメッセージ

自分が住む町には面白いものが何もないという声をよく耳にしますが、本当にそうでしょうか。身近にあるものは、その価値がなかなか見えません。実際に地域に足を運んでフィールドワークを行うことによって、今まで見えなかったものが見えてくる、そんな体験をしてほしいと願っています。地域に学ぶとは、既存のものを再発見することだと思います。

1964年、香川県高松市生まれ。

1991年、筑波大学大学院修士課程修了後、筑波大学附属高等学校などで、中学高校の社会科(歴史)教員を務める。2000年より朝日大学(岐阜県)専任講師。同大准教授を経て、2011年に鳥取大学准教授に就任。2018年より現職。

趣味は自転車。1年間に3000km以上走破する。

鳥取大学入試一覧