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トリダイ プロフェッサー常世田 好司

  • 医学部生命科学科

教授

常世田 好司

Koji Tokoyoda

細胞は感染を記憶できる。
その記憶の源にある
風景を観ていく。

免疫と“難病”の深い関係。

私たちは感染したウイルスや細菌を記憶する能力をもっている…。この発見は、免疫学の重要な起点となっている。“記憶”といえば私たちは「脳」が記憶しているものだと思いがちだが、それだけではない。「ウイルスや細菌に感染すると、それに対する免疫がつく…などと言われますが、免疫学のもっとも興味深いのは、病原体に対応する細胞自身が長寿命になることで“記憶”をしているということなんです。その記憶をする細胞(免疫記憶細胞)の生態などの解明が近年、急速に進んできました」。

常世田好司 教授が専門とする免疫学は、自身が学生時代の頃は、今ほど確立された学問分野ではなかったという。どちらかと言えば「免疫学的手法」という形で、遺伝子やタンパク質の検出に用いられていた。しかし医療では、多くのワクチンが作られることで、免疫は大きな役割を果たしていた。この頼りになるはずの免疫が人間に害を及ぼすことに大変驚いたという。「免疫の根本のところは解らないことが実に多いのです。国が指定する難病のうち、半分以上は免疫に関連する疾患です」。その多くが自己免疫疾患であり、細胞が記憶してしまうために治らない病気になってしまう。教授は、臨床とは少し違う立場でこれらの難病を見据えて、免疫の記憶という新たな側面から医薬品の開発に向けた研究をしている。

骨の中にあった細胞の神秘。

新型コロナウイルスの世界的な流行で、ますます免疫細胞の作用が注目されているが、そもそも免疫細胞は体内のどこから供給されているのだろう…。

そんな疑問をもち、大学院を修了後、骨の中で起こる造血作用に注目した。主に骨髄。「骨の中は酸素が少ないために細胞は活動しにくいと考えられています。でも免疫記憶細胞がそこにしっかりと存在し、いざという時に備えていました。これは私にとって驚きでしたし、研究の大きな転機になりました」と言う。その後、足かけ14年間、ドイツ・ベルリンにある国立研究所で、骨と記憶との連綿とした営みを分子レベルで精査してきた。

免疫記憶細胞は、細胞自体の記憶に基づいて病原体から即座に身を守る作用を準備してくれている。けれども、その記憶によって過剰に反応してしまうと体に害を及ぼしてしまうことがある。つまり、記憶細胞には体にとって「良い記憶と害を及ぼす記憶が混在している」。それを見極めながら難病に立ち向かう医学の進展を探っている。

[取材:2020年10月]

1975年、千葉県千葉市生まれ。

東京理科大学理工学部応用生物科学科、同大大学院理工学研究科修士課程、大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了。京都大学再生医科学研究所助手、ドイツ国立リウマチ研究所(ベルリン)ポスドク、千葉大学大学院医学研究院助教・講師を経て、2012年よりドイツ国立リウマチ研究所グループリーダーを7年半務める。2020年4月より現職。

「好奇心は研究や生活を充実させる活力です。学生には大学で好奇心を高めてほしい」と思っている。

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