トリダイ プロフェッサー景山 誠二
- 医学部医学科
教授
景山 誠二
Seiji Kageyama
世界の現場に赴き、
実際に見て動いて学び、
感染症と闘う人材となる。
「自分もできる」と自信を持つことが大切。
ペスト、インフルエンザ、エイズ…。人類は古くからさまざまなウイルス感染症と闘ってきた。感染症の世界的流行は「パンデミック」と呼ばれ、時には歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきた。そして、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、ウイルス感染症の問題の大きさを多くの人々に実感させている。フィリピンやケニアなど、さまざまな感染症対策の現場で豊富な経験を積んだ景山誠二 教授は「講義室に座って話を聞いているだけではリアリティーを伴わない。今まさに感染症の脅威にさらされている場所に赴き、実際に見て、自らの体を動かし、知ることが自信につながる」と話す。
教授は、感染症の脅威を医療(予防・診断・治療)によって軽減する方法として、アジア諸国と日本の双方に持続可能な医療のシナリオを作る必要性を訴える。医学部生の当事者意識を育てるため、世界保健機関・西太平洋地域事務所(WHO・WPRO)やフィリピン保健省(DOH)、その関連施設などでの研修や臨床実習、共同研究を通じて人材を育成し、より広域な感染症対策の構築に取り組む。
ウイルスの流行と重症化を予防する。
教授の大学在学中に、新たなウイルス感染症として発見されたのがエイズ(後天性免疫不全症候群)だった。エイズは急性感染症の新型コロナウイルスとは異なり、発症までに5〜10年かかる慢性感染症だが、その致死率の高さから対策が急がれた。教授は長年エイズ研究に携わり、その鬼気迫る現場の第一線で、感染者数の実態調査やワクチン・薬の開発、安全な血液の確保などに尽力。教授らの活動の成果により、エイズに対する治療方法は飛躍的に進み、発症をコントロールすることが可能になってきている。
「新型コロナウイルスの感染拡大が収まっても、そこからが『始まり』であるということを忘れてはならない」。地球上、国から国へと大勢の人々が自由に行き来する時代の到来を受けて、「風土病であるはずの多くの病気が世界を駆け巡る時代がくる」と予言する。「人類もただ侵されるだけでなく、短時間でワクチンや治療薬を開発するなど工夫するようになってきている。ソフト・ハード共に日本の研究室の世界的役割は大きいと信じています」。ウイルスと人の闘いは続く。
[取材:2020年10月]
1959年、岡山市生まれ。
博士(医学)。岡山県立岡山大安寺高等学校卒。鳥取大学医学部医学科卒後、同大学大学院医学研究科病理系ウイルス学専攻を修了。Retrovirology Section, National Cancer Institute, National Institutes of Health, USA、大阪大学微生物病研究所感染病理学部門助手、富山医科薬科大学助教授、金沢大学医学部助教授を経て、2008年に鳥取大学へ。
長く住んだフィリピンとのつながりは今も深く、研究生を受け入れたり、共同研究を行ったりしている。