鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー尾崎 米厚

  • 医学部医学科

教授

尾﨑 米厚

Yoneatsu Osaki

「社会医学」って何?
人々の健康をトータルに考えるとき
疫学調査から見えてくるもの。

“臨床の現場の実態”から近づいていく。

環境予防医学分野(旧衛生学)は、医学部の中ではそれほど目立たない世界かもしれない。「医学部医学科に入学する学生の多くは、病院で働くお医者さんになることをイメージされていると思いますが、この分野では、いわば“臨床の周辺”から疾病予防と健康増進をはかる研究をしています」と尾﨑米厚 教授。

鳥取大学のこの分野での歴史は古く、医学部の前身、米子医学専門学校時の1947年に開講されている。70年以上の長きにわたり、時代の変化に対応して公衆衛生に深く根付いた医学研究を進めてきた。

専門は疫学・公衆衛生学。「疫学を平たく言えば、人々の病気や健康のことについて社会環境を含めたさまざまな面から調査して数字にあらわし、統計学にもとづいてその結果を予防に役立てること」。ちょっと馴染みのない「疫学」だが医学領域においても重要な役割をもっている。なぜなら、疫学(調査・解析)によって人々の健康にかかわる保健・衛生、疾病などにかかわる多様な基礎資料が生まれ、それが医療・保健・介護・福祉を含めた厚生政策や社会保障制度の立案・評価、社会医学のさまざまな面に反映されるからである。科学的根拠に基づいた医療を行うための情報を臨床疫学的研究として提供します。

「依存症」は現代特有の病なのか。

教授たちの教室が取り組む研究の中で特徴的なのが「依存症」の疫学だ。とりわけ喫煙・アルコール依存、最近ではスマートフォンなどの普及にともなうネット依存、さらにIR(統合型リゾート)実施法の議論で注目を集めたギャンブル依存などが対象。厚生労働省研究班が進める全国規模の疫学調査にも携わり、多様なデータを提供している。調査対象は成人だけでなく中・高校生も含めた幅広い年代層に及び「最近ではネット依存の問い合わせが増えていて、ネットでの“ゲーム障害”にも注目しています」という。

一方、鳥取県の「地域がん登録制度」にも協力し、がんに関する疫学研究や、介護予防を目指した高齢者追跡研究も行っている。

「公衆衛生の分野で医師免許をもって活躍している人はたくさんいます。例えば、WHOや厚生労働省、国内各地域にある保健所や県庁の先生、産業医などです。このような社会医学系の専門医養成の重要性は高まっています」。

[取材:2019年10月]

1961年、鳥取県生まれ。

博士(医学)。鳥取県立倉吉東高等学校卒。島根医科大学医学部医学科卒後、同大学医学研究科博士課程修了。90年より国立公衆衛生院疫学部感染症室研究員。同院疫学部主任研究官、感染室長を経て2000年、鳥取大学医学部へ。

地域医療と国際保健をテーマとして学生が国内外の医療現場に赴いて学ぶ学内医療系サークル「ハクナマタタ」(スワヒリ語で「なるようになる」という意味)の顧問も勤める。

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