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トリダイ プロフェッサー香月 康宏

  • 医学部生命科学科

准教授

香月 康宏

Yasuhiro Kazuki

遺伝子を運ぶ
「染色体」という
大きな“船”に乗る。

iPS細胞研究とコラボする人工染色体のこと。

生命の設計図とも言われる遺伝子を生命体の中で秩序立てて運ぶ、いわば「船(ベクター)」のような存在が染色体だ。人間には46本の染色体上に2万個もの遺伝子が積み込まれている。

香月康宏 准教授の研究は、この染色体という船を利用して、難病治療や、創薬研究に応用することだ。大きな船(染色体)から荷物(遺伝子)をおろし、空っぽの船にしたのが人工染色体だ。従来型のベクターは小型船なのに対して、人工染色体は豪華客船のような大型船であり、たくさんの遺伝子を運べる特徴を持っている。

難病治療分野では、難病の「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」に着目した。「発症原因となる遺伝子がヒトの中で最も大きな遺伝子サイズで従来型の小型船(ベクター)では運ぶことができませんでした。その巨大な原因遺伝子を運ぶ大型船(人工染色体)をつくれないかと考えた」。その後「山中伸弥 先生のiPS細胞と出会い、患者さんの治療のための研究を進めてきた」。患者さんのiPS細胞に“修復”した遺伝子を持つ人工染色体を導入すると細胞自体には正常細胞と同じ機能があることが確認されている。問題はその先にある。「実用化には、安全性が確かなこと」が必要だ。乗り越える課題はまだ多い。

「ヒト型モデル動物」の助けを借りて。

別に准教授はラットやマウスなどの「ヒト型モデル動物」を人工染色体を用いて開発し、創薬研究に応用している。

新しい「治療薬」の開発段階で、マウスで安全性等の実験が行われたとしても被験者であるマウスは人間ではない。そこで、「ヒト(人間)型モデル動物」を想定した染色体を人工的につくり、その働きに視線を向ける。

「人とマウスやラットでは体内での代謝酵素に違いがあります。人工染色体技術を用いて遺伝子を置き換えることによって人と同じような代謝をする“ヒト型のマウスやラット”を作製することができます。その動物の助けを借りて、新薬の有効性や安全性の実証に役立てることができると思います」。最近では安全かつ効果的ながんに対する抗体医薬品の開発をするため、人工染色体技術を用いてヒト抗体産生動物の開発に成功するなど、准教授が取り組む研究テーマは人工染色体を中心に幅広く、国内外の大学や製薬企業から関心が寄せられている。

[取材:2016年11月]

1977年、京都府生まれ。

博士(生命科学)。京都府立洛北高等学校卒。「がん」の治療に貢献したい思いで鳥取大学医学部生命科学科卒。04年、同大大学院医学研究科博士後期課程修了(生命科学系専攻)。15年より染色体工学研究センター・バイオモデル動物開発部門長、18年より同研究センター・創薬研究・支援部門長、研究推進機構・先進医療研究センター・副センター長、とっとり創薬実証センター・センター長併任。

「勉学の道(未知?)は長いので忍耐力とパッションが必要ですよ」。5人のご子息のお父さんでもある。

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