鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー村田 周祐

  • 地域学部地域学科
  • 地域創造コース

教授

村田 周祐

Shusuke Murata

蓄積された生活の知恵を学び、
そこに住む人の立場になって
地域のこれからを考える。

その土地にはその土地のやり方がある。

「普通の暮らしの中に共に生きていく知恵がある。いくら優秀な技術でも、その地域の個性に合わせて変えなければ何の意味もない」。村田周祐 教授がそう言い切るのには理由がある。環境工学を学んでいた大学時代、アフリカのガーナに水田式稲作技術を伝える農村開発プロジェクトに1年間参加した。その結果、単位面積収量は10倍と爆発的に増え、プロジェクトは一見成功したかに思えた。しかし、稲作の収入で突然に潤った村の秩序は崩壊し、結果として村人たちの“普通の暮らし”は損なわれた。

生活のためにと、自分がもたらした技術によってそこで営まれてきた生活を壊してしまった。大きなショックを受けて帰国し、なぜそうなったのかと考えを巡らせる日々。答えを求めて本を読む中で、日本民俗学の系譜に連なる社会学「生活論」に出合う。「相手の立場になって考えなさい」という生活論に触れ、「アフリカでやったことは、全くその人たちの立場になっていなかった。そこに住む人たちの目線で、その土地の未来を考えなければならない」と気付く。

暮らしの場に飛び込むことから始める。

それから、漁村に住んで漁船に乗ったり、一緒に飲んだり騒いだりと、実際に出向いて住民たちと生活や行動を共にし、その土地のありようやこれからを考える社会学へと転身。「時間はかかっても自分の身体をもってその地域の個性を知り、暮らしに思いをはせることが大事」と教授。例えば、宮城県の豪雪地帯にある限界集落へ学生と雪かきボランティアに行くと、同じ高齢の独居世帯でもボランティアを入れる家と入れない家があった。その選別の理由を集落の代表者に聞くと「近隣に住む子どもたちが雪かきをしに村へ帰ってくる機会を奪ってしまう」と教えられた。「私たちボランティアがすべての家の雪かきをしていたら、家族の大切な絆や暮らしを成り立たせているしくみを壊していたかもしれない。その土地その土地に応じたやり方がある」と話す。

研究室に入ってきた学生たちには「何が好きなの?何を大切にしたいの?」とまず聞くという。「その問いの答えは、自分が生きる切実な問いや世のため人のためにつながります。地域は英知の宝庫。そこにある暮らしに飛び込めば、いつでも胸躍る体験ができます」。冒険はすぐそばに転がっている。

[取材:2020年10月]

1977年、広島県生まれ。

博士(学術)。広島城北高等学校卒。島根大学生物資源科学部生態環境科学科卒後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。同大学大学院生命環境科学研究科博士後期課程単位取得退学、同大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了。東北福祉大学総合福祉学部助教、同大学健康科学部講師を経て、2017年に鳥取大学へ。

22年には、自身が社会学に目覚めた原点であるガーナで1年間のプロジェクトに参加する予定。

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