トリダイ プロフェッサー小笠原 拓
- 地域学部地域学科
- 人間形成コース
准教授
小笠原 拓
Taku Ogasawara
ことばの学びを通じて
子どもたちの可能性を広げる
国語の教員を育てる。
時代に応じて変化することばの学び。
「『ことばの学び』は人の一生に関わるもの。ことばを学ぶよい環境を整える大きな要因が国語教員」と話す小笠原拓 准教授は、学習者と教員がともに幸福になれる国語の授業をどのようにすればつくることができるのか、歴史的手法と実践的手法の両面から研究に向かう。時代に応じて国語教育に求められるものも変わってきている。例えば、昨今の教育の現場では、日本語を一番近しいことばとして身に付けていない外国出身の子どもの就学が増えている。このような状況において、「国語科」という授業を改めて考え直す必要があるという。これまではどう捉えられ、これからはどんな「国語科」が求められているのか。そんな問いと向き合いながら、未来の「ことばの学び」を担う学生たちをサポートする。
学生たちの研究テーマは、授業の進め方や教材の研究、好きな作家についてのまとめなど多岐にわたる。中でも図書館や図書室は「国語の指導に欠かせない場所」と言い切る。本に関係する取り組みの一つとして、2年生の授業で、段ボール箱一箱分の本から店が開ける一箱本市「トットリヒトハコ」を鳥取市で2018年から年に1回、春に行っている。自身も出店し、好きな本や面白かった一冊を並べ、「本を通じて会話できることが楽しい」とにっこり笑う。
本の中に自分の居場所を見つける。
鳥取大学に赴任した頃に行った研究の一つに、鳥取県米子市のある学校の先生たちが作成した作文集についてのものがある。昭和10年代、小学校の先生たちが生徒の作文について「こういう内容にどう対応すればいいのか」と話し合うために作られたもの。「鳥取県は当時の作文『生活綴方』の先進県の一つで、鳥取大学に来たら生活綴方の研究はしないといけないと思っていた。学校の先生方がわざわざ子どもたちの作文を資料としてまとめ、集まって対応を話し合っていたのはおもしろい」。
「言語や本など、ことばを介した文化的なものにずっと救われてきた。少ししんどいなと思った時でも本を読むとそこに自分の居場所を見つけることができた。本を読んだり、ことばに触れたりする楽しさを知って、子どもたちが自分の可能性を広げるきっかけを提供できる教員になってほしい」と願う。
[取材:2019年10月]
1972年、大阪府生まれ。
博士(学術)。大阪府立三国丘高等学校、神戸大学教育学部卒後、同大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。神戸松蔭女子学院大学非常勤講師などを経て、2003年から鳥取大学へ。
学生には「大学では高校と違って、答えのない課題について考えることが大事になってくる。余計なものも含めていろいろなことに挑戦して、自分のやりたいことを追求し、学ぶ楽しさを身に付けてほしい」と思っている。