鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー寺川 志奈子

  • 地域学部地域学科
  • 人間形成コース

教授

寺川 志奈子

Shinako Terakawa

子どもの気になる行動、
心の変化の意味を
「発達」の観点から探る。

子どもたちの心が大きく成長する瞬間とは。

「子どもは皆、他者をくぐって心を育てていく。親きょうだいや友達とぶつかったり言い合ったりする中で鍛えられていくんです。そうして相手の心に気付き、また自分の心も見えるようになる」。子どもたちの発達と教育を研究する寺川志奈子 教授はこう語る。

お互いを見知らぬ幼児4人を集め、しばらく共に過ごすうちに、その関係にどのような変化が表れるかを見る研究を行った。子どもたちだけを部屋に残して自由遊びをさせた後、保育リーダーが補助してみんなで「あぶくたった煮えたった」の遊びをする。そして再び4人だけで自由遊びをさせ、最後に15個の飴を分け合ってもらうというものだ。「『あぶくたった』を通して4人が仲良くなったグループは、互いを気遣うように飴を分け合います。でも、遊びがあまり盛り上がらなかったグループは、相談し合うことなく飴の取り合いになる」という。もちろん年齢・男女で行動に差はあるが、遊びを通して子どもの心に“他者を認める”という変化が生まれていることが分かる。教授は、子どもたちがとる様々な行動の意味を「発達心理学」の観点から読み解いている。

気になる行動は、新しい力が芽生えている証。

小学生から高校生までの12年間、特別支援学校に通う子どもたちの発達を追いかけたこともある。また近年は、フィンランドの小学生を対象に、発達心理や教育環境等について日本との違いを調査研究中だ。

こうした研究成果を生かし、教授は、子どもの発達に悩む保護者や教員に対する相談活動も行っている。「大人は、目標に向かって子どもを引っ張り上げようとしがちですが、無理に急がせず、年齢ごとに見せる“発達の姿”を大切にしてほしい」とアドバイスする。例えば、2〜3歳の幼児が床の上にひっくり返り足をバタバタさせてぐずる場面。親は言うことを聞かない我が子に困り果てるが、見方を変えれば、自己アピールができる年齢になったという成長の証。精いっぱい自我を発揮して、相手を求め、そして受けとめてもらうという過程を通ることで子どもは成長するのだ。

「発達のプロセスを理解し、長い目で見通すことができないと、子どもの何を大事にしてどんな力を太らせてあげればよいか判断できない。“その年齢らしさ”を明らかにして、子どもの変化を尊重できる関わり方を見つけたい」。やわらかな口調の中に、教授の強い信念が見えた。

[取材:2017年9月]

大阪府出身。

教育学修士(京都大学)。大阪府立四條畷高等学校卒。早稲田大学第一文学部哲学科心理学専修卒後、京都大学に編入、同大学教育学部教育学科卒。同大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は発達心理学。学生時代から発達研究とともに、乳幼児健診や保育所、学校等において子どもたちの発達相談に携わってきた。臨床発達心理士、学校心理士。

1996年鳥取大学へ赴任。2011年地域学部教授。

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