鳥取大学 入学試験情報

トリダイ プロフェッサー稲葉 央

  • 工学部化学バイオ系学科

准教授

稲葉 央

Hiroshi Inaba

化学の力を利用して
目には見えない
“ナノの世界”に触れる。

極小のチューブ内部に分子導入。

「目に見えないくらいの小さなチューブの中に、さまざまな物質を詰めることができる。そう聞いただけでワクワクしませんか」。私たちの体を構成する細胞の一つひとつにごく小さいナノチューブ(微小管)が存在し、その内径は15ナノ(10億分の1)メートル程度で、髪の毛の5千分の1ほどという細さ。稲葉央 准教授は、そのナノサイズの微小管の中に、人工的にタンパク質を導入することに成功した。

人の細胞の中にはチューブ以外に、球体やシート、ドーナツ状などさまざまな形状のタンパク質がある。「形が多様で、細胞内でできたり壊れたり動いたりして、それぞれの機能を果たしている。きれいでおもしろいと思いました」。学生時代に“ナノの世界”に魅せられ、生きている細胞を刺すタンパク質の「針」の研究などに取り組み、鳥取大学に着任してから微小管内部への分子導入に関する基礎研究の一端を担っている。

ナノレベルのものづくりを楽しむ。

微小管の構造モデルを手掛かりに、内部に結合するペプチドという分子をつくり、そのペプチドに蛍光タンパク質や金属、磁石などを連結させて、微小管の中に入れていく。目に見えないサイズのものを扱っているため、導入できたことを確認するのも一筋縄ではいかない。最新の顕微鏡や化学的な手法を駆使して解析を進め、微小管内部に物質が入っていることを証明する。これまでの研究で、微小管内部にタンパク質が内包されることで、従来よりも構造が安定化して壊れにくくなり、硬さや長さ、運動速度が上昇することが分かった。

「これまで誰もやったことのない試みで、ナノの世界でどんなことが起きているのか想像しながら試行錯誤する毎日です。でも、そこが面白い」。微小管の中にさまざまなものを詰められるようになれば、将来、抗がん剤の開発や体内に薬剤を運ぶナノマシンの構築、細胞を自在に操作する技術などにつながるのではと大きな期待が寄せられている。「得られた知見が応用につながればこれ以上のことはありませんが、一方で純粋に化学的な面白さを重視し、新規構造体の開発や新しい現象の発見を目指しています。大学でしかできないことがあります。一緒に“ナノレベルのものづくり”を楽しみませんか」。

[取材:2020年10月]

1987年、長野県生まれ。

博士(工学)。長野県松本深志高等学校卒。名古屋大学理学部化学科卒後、同大学大学院理学研究科物質理学専攻博士前期課程を修了し、京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻で博士(工学)を取得。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校化学科博士研究員を経て、2016年に鳥取大学へ。趣味はレコード鑑賞。子育てにも積極的に参加し、幼い長女の旺盛な好奇心に刺激を受けている。

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