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トリダイ プロフェッサー松浦 和則

  • 工学部化学バイオ系学科

教授

松浦 和則

Kazunori matsuura

バイオ化学から読み解く、
ナノ世界への新たなアプローチ。

ウイルスをヒントに有機化学を進化させる。

松浦和則 教授が研究するペプチドの化学合成は、SF映画『ミクロの決死圏』(1966年、リチャード・フライシャー監督・米国)が描く世界を彷彿させる。医療スタッフを乗せたミクロの潜航艇を体内に注入し、脳の内部から病気を治療するという、なんとも奇想天外な物語。ただし、教授が扱っているのはミクロどころかナノレベルの超微細の世界だ。

「分子が集まると一定の構造をつくるとか、その構造が何らかの機能性をもっていることには興味があったのですが、それが形だけではなく実用的な側面をもって応用できないかと考えた」。その発端となったのがタンパク質の構造解説にふれたときだったという。

地球上の生命体の根源をたどるとアミノ酸に行き着く。ペプチドもタンパク質もアミノ酸で形成されるが、ここには科(化)学的にも論理的にも、まだ解き明かせない不可解なフィールドがいっぱいある。だからこそ「新しい発想をもって進みたい。解析だけでなく、それを踏まえて次の創造を」と、教授が注目した相手が、なんとウイルスだった。

ウイルス?というとインフルエンザ、それともHIVとかコンピューターウイルスのこと?怖いよ…と思うかもしれないけれど、もう一度、よく考えてみると「ウイルス」が発する“ウイルスなりの流儀”があるのではなかろうか?ウイルスの多くはタンパク質の集合体が核酸(DNAやRNA)を保護するように囲むキャプシド(カプセル:外殻)を遺伝的につくる性質をもつ。それを人工的に合成することの一歩を、教授は踏み出している。

自主性から一歩ずつ前に進もう。

多くのウイルスは不思議なことに、規則的なキャプシドをつくることが知られている。中には構造上、対称軸をもつ多面体を形成するものがある。化学を学びながら、そうした自然界で起こっている現象を観て「自然は、すごいものだと思う」と教授。トマトに宿るトマトブッシースタントウイルスのキャプシドには「正十二面体の内部骨格」をもつものがあり、教授たちは、その骨格形成にかかわるペプチド断片から分子設計した人工合成により、ウイルスと類似するキャプシドの構造体形成に成功した。

ただ、そのことがどんな意味をもつのだろう。いろいろな可能性が秘められている。キャプシド内に、核酸医薬やタンパク質医薬を組み込んだ治療薬の開発。はたまた、人工のナノカプセルなど従来にはない基礎素材づくりに結びつくかもしれない。

有機化学からバイオテクノロジー、生体分子化学などを学ぶうち「なぜ、そうした化学的な反応が起こるのか、その仕組みはどうなっているのかが少しずつわかってくると、はじめは面白いと思えなかったことが、そうではなくなります」。研究意欲が湧いてくると自主的に動くようになる。「高校までは先生たちが手取り足取り指導してくださるかもしれないけれど、大学ではそうはいきません。自主的に考え、行動してほしいですね。どうせ私なんて…と思うことより、大きな夢をもって挑んでいただきたいですね」。

[取材:2015年2月]

1968年福井県生まれ。

福井大学工学部応用反応化学科を卒業後、東京工業大学大学院生命理工学研究科博士課程(バイオテクノロジー専攻)修了。名古屋大学・九州大学大学院工学研究科助教授、科学技術振興機構「さきがけ」研究員(兼任)などを経て、12年鳥取大学へ。

「化学の面白さを知ったのは大学生になってから。それまでは数学が好きだった」。学生時の寿司店でのアルバイト経験が趣味になり「今でも握れます!」

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