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トリダイ プロフェッサー保坂 善真

  • 農学部共同獣医学科

教授

保坂 善真

Yoshinao Hosaka

世界の医学会で注目されている
「糖鎖」を獣医学の視点からひも解く。

研究のきっかけは競走馬の腱だった。

日本が世界でトップレベルと言える研究分野は少なくない。「糖鎖」の研究もそのひとつと言えるだろう。糖鎖とは、健康と長寿の鍵を握っているとされる分子。水や多様な物質を引き寄せ、組織の形づくりにも一役買っている。また、細胞の表面に存在し、細菌やウイルスなどが結合するマーカーのような特性も持っている。様々な病気が糖鎖の異常に関係すると考えられているが、そのほとんどの機能は解明されておらず、いわば無限の可能性を秘めた研究テーマでもある。

この糖鎖に獣医学の視点から切り込み、興味深い成果を発表しているのが、保坂善真 教授だ。これまでに、糖鎖による脂肪の貯蔵の抑制、骨粗しょう症の改善例などの報告を重ねてきた。

研究のきっかけは競走馬。サラブレッドの脚には腱や靱帯の損傷が多く見られ、その原因と組織の変化を研究していた。解剖学的な調査を重ねるうちに、細胞と細胞の間にある細胞外マトリックスの中に存在する糖鎖が細胞の増殖や分化に関係していることを突き止めた。

「組織が成長や修復するとき、驚くほどのスピードでダイナミックに細胞が分裂し分化が進みます。そのとき何が起きているのか、何が必要なのか、何が大切なのか。そうしたことに以前から興味がありました。それらをコントロールしている物質のひとつが糖鎖だったのです」。

長年にわたる興味と糖鎖が、がっちりと結合して教授は研究にのめり込んでいった。

運動器の形成にも「糖鎖」が関係?

世界トップレベルの研究分野とは言え、獣医解剖学をベースに研究している研究者は国内にはほとんどいない。そのため、教授の研究成果は多方面から注目されている。例えば、糖鎖の一種コンドロイチン硫酸が骨を壊す細胞の働きを抑え、逆に骨をつくる細胞の働きを促すという新たな研究成果を学会で発表したときは、会場から質問が相次いだ。

「骨以外の運動器、例えば筋肉や軟骨ができるときにも、糖鎖が関与していると考えられます。また、糖鎖が働くためにはある酵素が必要です。糖鎖と酵素の関係も、これから調べてみたい研究テーマのひとつです」。

秋田県の米農家に育ち、子どもの頃から動物を飼育しながら家業を手伝ったことから獣医師を目指すように。大学卒業後、獣医師になって東京で霞が関の省庁に勤めたものの、通勤ラッシュに耐えられずUターン。しかし、地元での公務員生活にもの足りなさを感じ、母校の恩師の紹介もあって大学教員の道を歩み始めた。そんな経験から学生にはこう伝える。「堂々と間違えてほしい。そして、つまずくことを恐れないでほしい」。

間違えることを恐れて思考を止め、安易に正解を求め安心したがる学生が増えたと教授はもどかしく感じている。いったん間違えてこそ正解の求め方を自分のものにできるのだし、つまずいてこそ見える世界もある。

授業は厳しく、単位取得では「保坂の壁」とも呼ばれている。それでも学生には兄貴以上、父親未満の頼れる存在。鳥取大学で最年少の教授は、“糖鎖”のように人を引き寄せて元気にする魅力にあふれている。

[取材:2015年2月]

1973年秋田県生まれ。

博士(獣医学)。秋田県立秋田高等学校卒。98年、北海道大学獣医学部獣医学科卒業。農林水産省畜産局に勤務後、Uターンして秋田市役所入所。酪農学園大学獣医学部講師、シンガポール分子細胞生物学研究所客員研究員を経て、08年に鳥取大学へ。14年より現職。日本獣医学会、日本解剖学会、日本糖質学会などに所属。

趣味は、旅行先の街を走りながら雰囲気を楽しむこと、そして、旅行先(特に海外)の床屋で散髪すること。

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